「ねえ、こういうの見たことある?」
英理子は、小学校3年生の頃、不運に見舞われた。
夏休み中にプール教室に通っていた時のことだった。
英理子は、小学校3年生の頃、不運に見舞われた。
夏休み中にプール教室に通っていた時のことだった。
暑い夏の日。
知らない男に道を聞かれた。
20代か30代か。
白いポロシャツにジーンズの、眼鏡をかけたひょろっとした男だった。
でも聞かれた場所に心当たりはなく、知らないと首を振った。
それなのに、男は英理子の後をついてきたのだ。
不審に思いながらも、学校への道を急いだ。
知らない男に道を聞かれた。
20代か30代か。
白いポロシャツにジーンズの、眼鏡をかけたひょろっとした男だった。
でも聞かれた場所に心当たりはなく、知らないと首を振った。
それなのに、男は英理子の後をついてきたのだ。
不審に思いながらも、学校への道を急いだ。
細い路地に入り、学校が坂の上に見えてきた頃、男が再び声をかけた。
「ねえ、こういうの見たことある?」
何かと思って振り返った英理子の目に飛び込んできたのは、見たこともないグロテスクな、こちらに突き出した赤黒い長いものだった。
男はヘラヘラニヤニヤと笑っていた。
これが何を意味するのかはわからなかった。
でも、本能的に英理子は逃げ出した。
「ねえ、こういうの見たことある?」
何かと思って振り返った英理子の目に飛び込んできたのは、見たこともないグロテスクな、こちらに突き出した赤黒い長いものだった。
男はヘラヘラニヤニヤと笑っていた。
これが何を意味するのかはわからなかった。
でも、本能的に英理子は逃げ出した。
しかし男は素早く英理子の手首を掴んだ。
とっさに持っていた水泳バッグを男に叩きつけた。
「待ってよ!」
男は叫んだが英理子は振り返りもせずに学校へ駆け込んだ。
とっさに持っていた水泳バッグを男に叩きつけた。
「待ってよ!」
男は叫んだが英理子は振り返りもせずに学校へ駆け込んだ。
英理子の心臓は、ばくばくと激しい音を立て続けた。
走ったことによる息切れが治っても、その心臓の音が身体中に響いていた。
学校には、同じくプール教室に通う友達がワイワイと集まっていた。
「あ、英理子ちゃーん!」
声をかけられても、うまく笑えない。
走ったことによる息切れが治っても、その心臓の音が身体中に響いていた。
学校には、同じくプール教室に通う友達がワイワイと集まっていた。
「あ、英理子ちゃーん!」
声をかけられても、うまく笑えない。
「どうしたの?走ってきたの?」
無邪気に聞かれる。
「ううん、あ、うん…」
間も無く先生が現れて出席をとった。
(誰か、先生とかに言ったほうがいいのかな…)
でも、なぜだか言えなかった。
無邪気に聞かれる。
「ううん、あ、うん…」
間も無く先生が現れて出席をとった。
(誰か、先生とかに言ったほうがいいのかな…)
でも、なぜだか言えなかった。
恥ずかしいからか。
自分は何も悪いことなどしていないのに、罪悪感があった。
男をプールバックで叩いた感触が手に残っていた。
プール教室が終わり、帰る時になって不安になった。
(またいたらどうしよう…)
さっきの細い路地を通りたくなかった。
自分は何も悪いことなどしていないのに、罪悪感があった。
男をプールバックで叩いた感触が手に残っていた。
プール教室が終わり、帰る時になって不安になった。
(またいたらどうしよう…)
さっきの細い路地を通りたくなかった。
英理子は、友達と回り道をして帰った。
家に帰ると母親がアイスを出してくれた。
けれど、今日起きたことを母に話せたのは、3日ほど経ってからだった。
家に帰ると母親がアイスを出してくれた。
けれど、今日起きたことを母に話せたのは、3日ほど経ってからだった。
これが、英理子が初めて男のペニスを見た経験だった。
幸いにも、それ以上のことをされることはなく、男にもう会うこともなかった。
母親が学校に連絡してくれ、登下校時には保護者が同行することになった。
けれど、同じような白いポロシャツにジーンズ、そして眼鏡の男を見ると体がこわばった。
幸いにも、それ以上のことをされることはなく、男にもう会うこともなかった。
母親が学校に連絡してくれ、登下校時には保護者が同行することになった。
けれど、同じような白いポロシャツにジーンズ、そして眼鏡の男を見ると体がこわばった。
この事件は、英理子の心に大きな傷を残した。
最近は世の中に痛ましい事件が次々と起きていて、それに比べれば大したことではないのかもしれない。
でも、英理子は、男に対して拒絶反応を示すようになっていた。
最近は世の中に痛ましい事件が次々と起きていて、それに比べれば大したことではないのかもしれない。
でも、英理子は、男に対して拒絶反応を示すようになっていた。
頭で考える前に、男というものに対して身がすくむ。
相手が何をしているわけでもないのに。
特に年上の大人が怖かった。
中学校の担任が、この時の男に似ていた。
学校に、行けなくなった。
相手が何をしているわけでもないのに。
特に年上の大人が怖かった。
中学校の担任が、この時の男に似ていた。
学校に、行けなくなった。
その後、私立の全寮制カトリック系女子校に編入した。
教師も生徒もみんな女。
女の園。
ようやく英理子は、笑顔で暮らせるようになった。
教師も生徒もみんな女。
女の園。
ようやく英理子は、笑顔で暮らせるようになった。
女子校。
それは、男にとっては幻想を持ちがちなものだろう。
その上全寮制。
でも、女子校とは男の目がないだけはした無くなり、慎みを失いがちだ。
この、英理子の学校を除いては。
それは、男にとっては幻想を持ちがちなものだろう。
その上全寮制。
でも、女子校とは男の目がないだけはした無くなり、慎みを失いがちだ。
この、英理子の学校を除いては。
かなり厳格な規則があり、敬虔なカトリックの子女が通うからか、かなり閉鎖された空間で生徒たちはしづしづと暮らしていた。
部屋は2人部屋で、上級生と下級生が組む仕組みになっていた。
英理子は、先輩に助けられ、後輩の面倒をみ、充実した寮生活を送っていた。
部屋は2人部屋で、上級生と下級生が組む仕組みになっていた。
英理子は、先輩に助けられ、後輩の面倒をみ、充実した寮生活を送っていた。
中学2年の時の同室は、3年の真紀先輩だった。
真紀先輩はスポーツが得意で、バレー部のキャプテンをしていた。
高等部からも一目置かれるほどで、いわゆるみんなの憧れの的だった。
面倒見が良く、明るい真紀といっしょの生活は楽しかった。
真紀先輩はスポーツが得意で、バレー部のキャプテンをしていた。
高等部からも一目置かれるほどで、いわゆるみんなの憧れの的だった。
面倒見が良く、明るい真紀といっしょの生活は楽しかった。
ある時を境に、その楽しみが変わった。
英理子はその週末、自宅に帰省していた。
日曜の夕方に帰るはずが、父の出張が重なってしまったので、父の出発に合わせて昼過ぎに寮に戻ってきた。
自分と真紀先輩の部屋に入ろうとドアノブに手をかけると、中から微かに声がした。
(真紀先輩いるんだな。)
英理子はその週末、自宅に帰省していた。
日曜の夕方に帰るはずが、父の出張が重なってしまったので、父の出発に合わせて昼過ぎに寮に戻ってきた。
自分と真紀先輩の部屋に入ろうとドアノブに手をかけると、中から微かに声がした。
(真紀先輩いるんだな。)
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