2017年1月10日 更新

ユリとスミレのむつみごと 【1】

ユリは32歳の主婦だ。建築会社勤務の夫は優しいし、可愛い一男一女にも恵まれて、幸せに暮らしている。 そんなユリには、忘れられない思い出があった。今も時折思い出すあの甘美なひと時…スミレとのあのひと時…。

ユリは32歳の主婦だ。建築会社勤務の夫は優しいし、可愛い一男一女にも恵まれて、幸せに暮らしている。
そんなユリには、忘れられない思い出があった。今も時折思い出すあの甘美なひと時…スミレとのあのひと時…。
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ユリが大学3年の春だった。

先日入学式を終えたこの女子大にはいつもよりさらに華やいだ雰囲気が漂っていた。晴れて女子大生になった喜びからか、一年生たちは美しく装い、表情も朗らかだ。

ユリの所属するオーケストラサークルにも、新入生がたくさん見学に来ていた。

その日は勧誘のためのミニコンサートがある予定で、黒のロングワンピース姿で会場に向かっていた。
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右手にはフルート、左手には楽譜を持っていた。

少し長すぎるスカートの裾が邪魔だが、両手はふさがっている。

転びそう…と思った瞬間つんのめった。

「!!」

楽器もろとも転倒した…はずなのにどこも痛くなかった。

そこには見慣れないスレンダーな女性が、ユリを支えていた。

「危なかった…気をつけてくださいね」

「あ、ありがとうございます…!」

慌てて体勢を整えてお礼を言った。

「いえ、演奏楽しみにしています。」

コンサートに来てくれるんだ…

「よかったら楽譜お持ちします。そしたら裾持てるでしょう?」

「あ、ありがとうございます…」

楽譜をすっと受け取り、一緒に会場まで歩きながら女は言った。

「後輩なんで、敬語じゃなくていいですよ。」

綺麗な身のこなしが印象的なこの女は、スミレと名乗った。文学部に入学した一年生だった。
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翌日、スミレはオーケストラサークルにやってきた。中学生の頃からクラリネットを吹いているということだった。

ちょうどクラリネット担当が卒業して空席だったので、すぐに楽譜を渡された。

座席はユリの真後ろだった。
スミレは驚くほどにうまかった。

聞けば、音楽大学に進むかこの女子大の文学部に進むか悩んだのだという。

誰もが聞き惚れてしまうような艶っぽい、不思議な色気のある音色だった。
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ある日スミレはユリの隣にやってきて言った。

「今日ちょっといいですか?新しい楽器を買おうかと思って今楽器店から借りてるんですけど、聴き比べてもらえませんか?」

特に予定のなかったユリは、快く引き受けた。
練習が終わった20時ごろから、ホールで聴き比べをした。

どちらもいい音だったが、やはり新しい方がいい、という結論が出た。

一緒にホールを出ると、21時を過ぎていた。

「ちょっと一緒にご飯食べに行きませんか?お礼におごりますよ!」

スミレは不思議な女で、年下なのにノーと言わせない何かがあった。

二人はスミレオススメのイタリアンに行き、ワインと一緒に食事をした。
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「ユリさん、大丈夫ですか?」

スミレが覗き込む。

「ん…ちょっと酔っちゃったかも。。」

ユリはそんなにアルコールに強くないのでいつも気をつけているだが、この日はついつい飲み過ぎてしまった。軽く世界が回っている。

「ウチに行きますか?ここからすぐだし。ユリさんのお家電車で5駅くらいでしょ?」

「ん…」

なんでうちの場所知ってるんだろ…話したっけ…
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スミレの家に着いた。

夜風に当たって少し歩いたからか、さっきより酔いは覚めていた。

「どうぞ、楽にしてくださいね。お水持ってきます。」

ユリはベッドにもたれた。

モノトーンに紫色がさし色の、クールなインテリア。スミレらしい。
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グラスに入れた氷水を運んできた。

スミレは上着を脱いでキャミソール一枚になっている。

「ありがと…」

手を伸ばしたが、よって目測を誤ったらしい、グラスは真っ逆さまにユリの胸元へ落下した。

「きゃああっっ!」

「すみません!!」

ユリの上半身は氷水でびしょびしょになってしまった。ブラウスが肌に張り付く。

「大丈夫ですか…?」

一瞬の間があってからいつもの落ち着いた声で尋ねた。
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LAYLA LAYLA